あとがき   私がこの体験を記録として残しておきたい、と思い立ったのは復員し てからすぐの事でした。
  当時は戦死した兵隊のこと、戦地はどこへ行って来たとか、戦闘はど んな様子だったかなど、戦地へ行って来た人達からは色々な体験談を聞 かされたものでした。
  しかし、誰の話しを聞いても私達のような悲惨な戦闘の様子は聞かれ ません。
  やはり俺達が一番苦労したんだなあ、と思う様になってから、この事 はどうしても書き残さなければならない、という気持ちがますます強く なって来ました。
  しかし、非才な私にはとても出来ることではなく、せめて日にちや地 名、僅かなメモ書きなどを書き続けました。また、毎年行われる戦友会 には殆ど欠席した事はなく、そこでまた戦友同士の話の中から自分で忘 れていたことを思い出したりした、その積み重ねが今の出版に連なる事 になったのです。
  勿論この体験記はビルマ戦線のすべてではありません。私の通って来 た道すがらの出来事、身をもって体験して来たものを書いただけで、そ の陰には二度と繰り返してはならない、活字として残されない私達の想 像に絶する、生々しい悲惨な事実が繰り広げられているのです。
  出版に当りまして、電気化学工業株式会社元千葉工場長・野村精二様 の絶大なご支援、また青海町立保育所所長・八木小富さん、表紙題字は書 家・網谷石翠さんの書によるもので、皆様のご協力に対しまして満腔の 謝意を表するものであります。

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